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映画のコトやら何やら綴りませう
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第1作「ポリス・ストーリー/香港国際警察」(1985)から20年、あのジャッキーの傑作シリーズが帰ってまいりましたよ。

「香港国際警察/NEW POLICE STORY」(2004)
新警察故事

警官をゲーム感覚で殺害する若者グループ。チャン警部(ジャッキー・チェン)は部下を率いて逮捕に向かうが、逆に罠にはまって部下を皆殺しにされてしまう。謹慎処分となり失意の日々を過ごすチャン。酒に溺れるチャンの前に一人の若者シウホン(ニコラス・ツェー)が現れた。新しくチャンの相棒に任命されたと言うシウホンはチャンを励まし、共にあの凶悪なグループを追うように説得するのだった。

まぁ、本作に対して不満のある人がいるのはわかります。明るく楽しいいつものジャッキー映画を期待していた人には少しばかりキツい内容かもしれません。もうね、序盤の犯罪グループに捕らえられた警官達が次々と無惨に殺されていくあたりで、ちょっとこれは楽しい娯楽作品ではなさそうだと。
初期の楽しい娯楽アクションだった「ポリス・ストーリー」シリーズを期待して観に行って、そのあまりの暗い内容に唖然とした「新ポリス・ストーリー」(1993)を思い出したりしましたね。
後、以前のジャッキー映画の最大の見せ場たる生身のアクションがとても少ないというのも不満の上がるところでしょうか。私自身不満とは言わないまでも、少々寂しいなぁと思います。

とは言え、本作の頃でジャッキーも50歳。アクションスターとしては厳しいところでしょう。本作においても50歳にしては素晴らしい動きだとは思いますが、過去の生身アクション主体の作品の頃とは比べるべくもないのは仕方のないところ。
と言うわけで本作を含め最近では生身アクション主体から、ドラマ性や(生身ではない)大仕掛けのアクションをメインにした作品作りを意識的にしていると感じられます。以前このブログでも書いた「メダリオン」(2003)「80デイズ」(2004)なんかもそうですね。
本作でも序盤の重い空気を吹き飛ばすようにド派手なシーンが次々と展開します。高層ビルの壁を滑り降り、2階建てバスが香港の市街を破壊しながら暴走し、クライマックスは香港コンベンションセンターの大屋根の上へ。いずれも日本では撮影許可が下りそうにないようなシーンばかりで羨ましいこと(笑)。
こうした派手なアクションシーンを挟みつつも、ドラマ自体は結構地味。わりと行き当たりばったりな展開も香港映画的でしょうか。とにかく観客を楽しませるんだという意気込みを感じられるのはこれまでのジャッキー映画同様に嬉しいところですね。ジャッキー自身のアクションが少なくなっていくのは寂しいですが、そこらへんのマインドを持っている限り、いくら派手な見せ場をメインにしても単なるハリウッド大作の模倣に終わらないと信じます。

ただ本作のドラマ的にマズイなぁと思うのは、やはり序盤の残虐な警官殺しですね。これがどうしても最後まで引きずってしまうので、いくら最後に犯人グループの心理的理由や葛藤を描かれても同情する気にはなれないと。要するに見終わって心からスカッとしないんですよねぇ。

さて今回ジャッキーの相棒役のニコラス・ツェーという二枚目俳優ですが、彼が実に良かった。彼の活躍を見るだけでも価値あると思われます。そして彼とジャッキーが路地裏で初めて出会うシーンが素晴らしく良いんですよ。酔いつぶれ暴漢に襲われて横たわるジャッキーにそっと近寄って傍らに座り込むツェー。なんだかお伽話のワンシーンのような美しさがありました。ここら辺の印象がツェー扮するシウホンという警官が本当に存在しているのかという雰囲気を醸し出してお見事。もしかしてシウホンは実は幽霊だったとか、超常的なファンタジー作品になるのではないかとすら一瞬考えてしまいました。

監督は「WHO AM I?」(1999)でもジャッキーと組んでいるベニー・チャンという方。「WHO AM I?」は正直イマイチな印象でしたが、本作での監督の手腕は素直に見応えあったと思います。ラストの病院での愉快なシーンはいかにも香港映画的ジャッキー映画的ハッピーエンドで好きですよ。

放送記録:2006年10月08日PM09:00~11:09ABCテレビ「日曜洋画劇場」

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「羊たちの沈黙」(1990)「ハンニバル」(2001)に続くご存じハンニバル・レクターシリーズ第3弾にして始まりを描く。

「レッド・ドラゴン」(2002)
RED DRAGON

連続猟奇殺人の捜査をするFBI捜査官グレアム。彼はその捜査に協力していた精神科医レクター博士こそが犯人と突き止め、重傷を負いながらも逮捕する。この一件の後現役を退き、家族と共に平和に暮らすグレアム。だが新たな連続殺人事件の発生に現場に呼び戻されることとなる。嫌々ながらも捜査を始め、そしてのめり込んでいくグレアム。だが捜査に行き詰まりを感じた彼は終身刑で収監されているレクターの元に助言をもらいに行くのだった。

オープニング、レクターの開く晩餐会からグレアムとの死闘の末の逮捕に至るあたりの流れが良いですね。個人的にはレクターがどうして人肉食に興味を持つことになったのか彼の心理的な側面も見たかった気はしますが、まぁそれは抜きにしても興味を引きつける悪くないオープニングです。
さてアンソニー・ポプキンスの当たり役となったハンニバル・レクター博士ですが、今回はあくまで脇役です。とは言え、その存在感をもって登場の度に空気を一気に引きつけてしまうのは流石。
ただ逆に言えば脇役のレクター博士に作品の空気を持って行かれるほど、本筋の方がいささか凡庸な筋立てだとも言えるのですが。

本作のサイコサスペンスとしての出来は決して悪いものではありません。ですがあまりに驚きのない王道的な展開に収まってしまっているのが少々勿体なし。レクターと捜査官の関係が「羊たちの沈黙」と同様の設定なだけに、わざと「羊たちの沈黙」と違った方向性を展開や犯人の設定等に持たせたのはわかるのですが・・・。特に終盤の犯人の屋敷爆発からグレアム一家の危機あたりの展開は凡百のサスペンスホラー等で飽きるほど見せられたもので、どうして今更こんな脚本を、といった感じ。

と言いつつ、ええ、なかなかに怖かったですよ。目新しさの薄いこの脚本を緊張感のある作品に仕上げた監督の腕はなかなか。ブレット・ラトナー監督と言うとジャッキーの「ラッシュアワー」(1998)シリーズは今一つ感がありましたがその他様々なジャンルの作品をそつなくこなすタイプの監督さんでしょうか。シリーズ最新作「X-MEN:ファイナル ディシジョン」(2006)もこの監督さんと知って俄然見たくなってきました。
また作品の緊張感を高めたのにはグレアム捜査官役のエドワード・ノートンと犯人を演じたレイフ・ファインズの熱演も忘れてはなりませんね。ポプキンスとこの二人を始め上手い役者さんを集めてます。
それにしてもFBI上司を演じているハーヴェイ・カイテルさんは良いですよねぇ。すっかり老けちゃいましたけど今も活躍している脇役中心の上手い役者さん。昔は印象的な悪役を多々演じられておりました。あまり賛同は得られないかもしれませんが(笑)、特に強烈な印象だったのが「スペース・サタン」(1980)。本作ではイマイチ地味な役回りに終わったのは残念かな。

放送記録:2006年10月05日PM09:00~11:14テレビ大阪「木曜洋画劇場」

今回は後半のみの鑑賞となりましたが。

「名探偵コナン 天国へのカウントダウン」(2001)

完成したばかりの日本一の高層ビル、ツインタワーに招かれた毛利小五郎と蘭、園子、コナン、少年探偵団といつもの面々。だがそのビルの関係者が次々と殺害されるという事件が発生。さらに最上階の会場で完成披露パーティが開催された夜、各所に仕掛けられた爆弾によってビルは炎に包まれた。炎の迫る中、最上階に取り残されたコナンと探偵団の運命やいかに。
消防隊長のオハラハンは命がけの救出作戦に挑むのだった(嘘)。

と言うわけですでに10作を数える劇場版「名探偵コナン」シリーズの第5作目にあたる作品です。
何度か言及しています通り劇場版シリーズで私が一番好きなのは第3作の「世紀末の魔術師」(1999)なのですが、本作はそれに次いで良い出来だと思います。いや、映画としての娯楽性では本作の方がやや上回っているかも。

「コナン」の映画を見ていつも気になるのは蘭ねーちゃんがやたらと悲劇のヒロイン扱いされているところですが、本作では蘭と新一の関係をさらりと流して他のキャラクター達にも見せ場を割り振っているところが特に気に入っています。蘭ちゃんだけでなく他のヒロイン、歩美、園子、哀それぞれにエピソードを設けて魅力的に描き、またいつもなら刺身のつま扱いの少年探偵団の面々にもしっかりと見せ場があるのは嬉しいところ。そしてそれが煩くない程度にしっかりと作品内に収まっているのは上手いと思います。
まぁその分事件そのものは単純で解りやすいものになっていますが、原作やTV版と違って劇場版シリーズは謎解きよりもアクションアドベンチャー的な見せ場が主という作りになっていますからこれはこれで良いでしょう。
ラストの脱出シーンはさすがにそりゃムチャだろうという展開ですが、でも楽しいから良し(笑)。

もう一つ劇場版シリーズで気になると言えば、毎回やたらとビルやら豪華客船やらがボッカンボッカン爆発するところで、派手にショーアップされればされるほどドラマが不自然に感じられてしまうんですよね。本作でもツインタワーがボッカンボッカン爆発するわけですが、そこに黒の組織を上手く絡めることで不自然さを薄めたのも上手いところかと。

とまあ結構私的にはベタ褒め気味ですが、ちょっとと言うかかなり気になる部分が本作には一つあります。超高層ビルでの火災、最上階での完成披露パーティ、停止した展望エレベーターでの危機、エレベーターシャフトを伝って広がる火災、屋上でのヘリコプターでの救出失敗、等々、舞台背景が名作「タワーリング・インフェルノ」(1974)と印象がかぶりすぎではないかと。オマージュなのかインスパイアなのかわかりませんが、もう少しオリジナリティを出した方が良かったと思われます。

放送記録:2006年09月30日PM06:45~08:54ABCテレビ「名探偵コナン10周年企画SPファイナルコナン祭り」

えっ? 実写ドラマ「名探偵コナン」?
なんですかそれは?(笑)

見ようか見まいか迷いましたが、再確認のために鑑賞。

「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」(2001)

この映画に関してはこれまでも何度か語っていることなのでサラッと流します。
映画としての完成度は高いです。随所に笑えるシーンや泣かせるシーンを散りばめた演出も心憎い。
けれど、この内容を小さな子供達が楽しみにしている「クレヨンしんちゃん」で何故やらなくてはならなかったのか。
当時この映画を見た大人達が感涙に耽ったという報道がやたらとなされていたけれど、その一方で本来のお客さんである子供達の反応というものがまったく聞こえてこなかった。
本作を中心とした原恵一監督の「クレヨンしんちゃん」諸作に描かれるノスタルジックへの拘りは年代的には私の世代に直球ド真ん中だけれど、それを幼児向けアニメで展開する感性には賛同出来ないし、もっとはっきり言えば気持ち悪い。原監督的におそるおそるノスタルジーへの拘りを小出しにしたのだろう「爆発!温泉わくわく大決戦」(1999)や「嵐を呼ぶジャングル」(2000)の中途半端ぶりも気持ち悪かったけれど、一つの完成型を見た本作はもっと不快なものを感じます。
繰り返し言いますが本作の完成度は高いし、評価もします。けれど好き嫌いで言うなら、私にはどうにも好きになれない作品なのですよ。

放送記録:2006年09月30日PM07:00~08:54ABCテレビ「クレヨンしんちゃんテレビ15周年記念!」

はみだし刑事とはみだし麻薬犬のコンビが活躍するコメディタッチの刑事アクションですよ。公開当時やたらとTVCMが流されていたのが懐かしく思い出されます。
って言うか、実は今日のTV欄を見て、おお!雪山登山と男の友情を描いた感動作ではないか、ロードショー時以来久しぶりに見てみるかぁ!と思ってチャンネルを合わせたことはここだけの秘密です(笑)。アレは「K2」(1991)でしたねぇ。

「K-9 友情に輝く星」(1988)
K-9

いつもやりすぎて上司と大喧嘩の絶えないはみ出し刑事。麻薬組織のボス逮捕に執念を燃やす彼はひょんなことから一匹の麻薬犬とコンビを組むことに。だがその犬も麻薬犬の中のはみ出し犬だった。

なんと言いますか、そこそこ笑えてそこそこ楽しめる刑事アクション作品です。
だけどそれ以上の作品じゃないんですよねぇ。まったく驚きのない生真面目な脚本。ギャグも所々クスリとはできるものの大爆笑するほどでは無く、アクションシーンもまぁこんなもんでいいだろ的な、全体として安いアクション映画に収まってしまっているのが勿体ない気もしますね。

ダーティ・ハリーのパロディ的なはみ出し刑事を演じるのはジェームズ・ベルーシ。天才的なコメディ俳優でありながら若くして亡くなったジョン・ベルーシの弟さんで、お兄さん同様演劇にコメディにと活躍した人ですが、イマイチお兄さんみたいな華がないのが辛いところ。本作の頃が「レッドブル」(1988)でアーノルド・シュワルツェネッガーと競演したりと絶頂期だったでしょうか。主演するほどには華がなく、むしろ脇役で光るタイプな気がします。
最近名前を聞かないなぁって思っていましたが、映画よりTVの方でいろいろと出ていたみたいですね。TVムービー等で「K-911(ナイン・ワン・ワン)」(2000)「K-9 はみだしコンビ大復活!」(2002)と続編が作られているあたり、やはりこの「K-9 友情に輝く星」がジム・ベルーシの代表作ということなのでしょう。

放送記録:2006年09月23日PM07:30~09:16サンテレビ「シネマスタジアム」

だいぶと涼しくなってきましたね。特に朝晩。で、こういう季節の変わり目には必ず風邪をひいてしまうんですわ。
こう言う時には薬を飲んで安静にしているに限るわけですが、こんな状態で雪山にでも放り出されたら堪らんなぁとかボーっとした頭で考えたり。しかも人喰い熊でも襲ってこようものなら確実に生還出来ない自信があります。
と言うわけで、もう昨夜ですがぐったりしながら見た映画。

「ザ・ワイルド」(1997)
THE EDGE

有り余る金と若く美しい妻を手に入れた大富豪の老人。そんな彼の唯一の不安は写真のモデルをつとめる妻が若いカメラマンと浮気をしているのではないか、そしてそのカメラマンが妻と財産を手に入れるために自分を殺そうと企んでいるのではないかということだった。
妻とカメラマンの撮影旅行に同行してアラスカの山奥のロッジまでやって来た富豪。ひょんなことから彼は妻をロッジに残し、カメラマンと共に飛行機に乗ってさらに奥地へと向かうことになる。だが渡り鳥の群れに突っ込んだことで飛行機は墜落し、彼らは人喰い熊の徘徊する原生林に投げ出されることになった。

発端となるストーリーは遺産と女を巡るなんだかお昼のメロドラマみたいな設定ですけど、いざ山中でのサバイバルが始まると俄然面白くなってまいります。互いに反目し合いつつ、生き延びるために否応なく力を合わせていく二人の男。二人は大自然の脅威を切り抜けることが出来るのか。そしてカメラマンには本当に殺意があるのか。
さらに面白いのはこの二人の設定ですね。富豪の老人は大の読書好きという設定で、本から得た様々な知識を生き抜くために生かしていく冷静沈着な人物。一方若くハンサムなカメラマンはただ他人に当たり散らし、おろおろするばかり。

富豪を演じるのはアンソニー・ホプキンス。ハンニバル・レクターでお馴染みの役者さんですが、私的にはそれより以前まだそんなに有名でなかった頃の「遠すぎた橋」(1977)での最後の橋を確保し続ける隊長役が印象に強かったりします。この「ザ・ワイルド」の頃で60歳くらいですがアクションもこなし、そして重厚な演技派流石に上手いところです。
カメラマン役はアレック・ボールドウィン。こちらも好きな役者さんですが、本作でも口先ばかりの傲慢な男を見事に演じていました。

さて、アラスカの山々を背景に飛ぶ飛行機の素晴らしく美しい空撮(そしてジェリー・ゴールドスミスの音楽がまた美しい)から一転して彼らを襲う大自然の脅威なのですが、飢えや寒さといった切迫した空気が画面から伝わってこないのはかなり不満です。ですがその代わりに最大の脅威として登場するのが人喰い熊というわけですね。
熊が襲ってくるというと「グリズリー」(1976)とか「アドベンチャー・ファミリー」(1975)とか思い出しますが、本作の熊ちゃんも主人公達をどこまでも追い続け襲いかかってくるというなかなかのモンスターぶりを見せてくれます。
このままでは到底逃げ切れないと悟った二人が力を合わせて熊と戦うところが本作の最大の見せ場。スターを本当に熊と戦わせるわけにはいかないのでスタントや編集で誤魔化してはいますが、いや流石に本物の迫力。緊迫感溢れる編集で、傷つきながらもなんとか熊を仕留めた瞬間には大喝采です。
熊を倒した後はさしたる危機もなく、最後は男同士の対決と相成ります。ここは二人の演技力の最大の見せ場でもあり悪く無しですが、直前に熊殺しという大きなカタルシスが合った分展開的心情的に少々厳しいなぁとも感じたり。

監督のリー・タマホリは本作の後「007 ダイ・アナザー・デイ」(2002)や、その007シリーズのパロディみたいな「トリプルX」(2002)の続編「トリプルX ネクスト・レベル」(2005)といった大味なアクション映画を撮っていますが、本作のような重厚な趣のある作品をまた撮って欲しいですね。

放送記録:2006年09月21日PM09:00~10:54テレビ大阪「木曜洋画劇場」

さて今日の金曜ロードショーのお題はヤン・デ・ボン監督の出世作「スピード」(1994)がまたまた登場ですか。本編はいささか締まらない内容ですが、頭のエレベーターでのサスペンスシーンはなかなにか絶品なんですよねぇ。今回もそこだけ見るかな。

公開当時からわりと好評でそのうちに見なくちゃと思っていた一本。
ただ当時から「驚愕のラスト!」とか「あっと驚くどんでん返し!」とか言われていて、最初からどんでん返しがあると分かっていては素直に楽しめんなぁ・・・なんて思っていた上に、微妙なネタばらしを見てしまったのでとりあえずその印象が薄れるまで置いていたという次第。
というわけで公開から3年、地上波TVでは放送してくれそうにないのでDVDで鑑賞です。

「“アイデンティティー”」(2003)
IDENTITY

嵐の夜、郊外のモーテルにそれぞれの事情を抱えた10人の客が泊まることになる。豪雨によって道路が寸断されて身動きの取れなくなったモーテルの支配人を加えた11人。そんな彼らの内の1人が何物かによって殺された。元警官のエドと殺人犯護送中だった刑事のロードは捜査を始めるが、しかし理由も分からないまま1人また1人と殺されていくのだった。
犯人は誰か。目的は何なのか。そして彼らがこのモーテルに泊まることになったのは本当に偶然だったのか。この連続殺人の裏には恐るべき事実が隠されていた。

エドを演じるジョン・キューザックを始めとして地味ながら上手い個性的な役者を集めていて、それだけでも見応えはありますね。ストーリーについてここでは詳しく語ることはしませんが、ラストは結構衝撃的。ただ大きなストーリー上のネタバレを全体の2/3が過ぎたあたりでしてしまっているのはちょっと早いかな。もう少しモーテルを舞台にしたサスペンスを楽しませて欲しかったかと。

10人の男女がモーテルに集まってくることになるオープニングは快調。ここらの演出を見ていて思い出したのはヒッチコック監督の「サイコ」(1960)のオープニング。まぁ訳ありの人物が郊外のモーテルに泊まって殺されるというのはそのまんまなんですが、その設定だけでなく演出そのものがどことなくヒッチコックを思わせるのですね。
本作の演出はジェームズ・マンゴールド監督ですが、この人は結構なミステリやサスペンス映画好きなのかな。もしくは脚本のマイケル・クーニーか。
殺された被害者の側に必ずモーテルの部屋番号が刻印された鍵が落ちていて、その番号が被害者の数のカウントダウンになっているあたりは本編中でも少し言及されている通り、これまで数度にわたって映画化もされているアガサ・クリスティーの名作ミステリ「そして誰もいなくなった」を彷彿とさせます。また嵐の中で孤立するという設定も「そして誰もいなくなった」ですね。同時にこの孤立したモーテルという限定された空間で物語が進むあたりはやはりヒッチコック監督の得意とするところで、そういった意味では本作そのものが様々な先人達の名作に対するオマージュとも思えます。

ただ、本格ミステリを期待して見ると裏切られることになるので注意が必要ですね。あくまでこれはミステリ調のサイコ・サスペンスでありましょう。
監督の演出は不安感を煽るカメラワークを多用し、そのサスペンスの盛り上げ具合は見事。ランニングタイム90分という最近では短く感じる作品ですが、実に過不足無くまとめ上げていると感じます。また一見地味ながら要所要所に使われる視覚効果も良くできています。全体として完成度は高し、です。

ところで脚本のマイケル・クーニーという人はかつて自ら脚本を書いて「キラー・スノーマン」(1996)という作品を監督した人なのですね。これは日本劇場未公開ではありますが数年前にTVで深夜に放送されたのを見たのですが、実にバカバカしくも楽しい、そして奇怪なホラー映画でありました。以降監督作は無く、脚本でも「“アイデンティティー”」が最後のようなのが残念なことです。

まぁ、すでに何度も見ているのにTV放送されるとついまた見てしまう。そんな映画って結構ありますが、これもそんな作品。
暗殺者と、暗殺から要人を護衛する老いたシークレット・サービスの対決を描いた骨太な一本です。

「ザ・シークレット・サービス」(1993)
IN THE LINE OF FIRE

かつて、ダラスでのケネディ大統領暗殺の現場にいながら任務を果たすことが出来なかったことを後悔し続けるシークレット・サービスのホリガン。老いて今は要人護衛の任務から離れている彼に一本の電話がかかってきた。相手の男は大統領を暗殺するというゲームを持ちかけてきたのだ。ホリガンはもう一度、大統領護衛の現場に戻る決意をするのだった。

若い頃に犯してしまった大きな失敗を気に病みながら年老いてしまったホリガンを演じるのはクリント・イーストウッド。「ダーティ・ハリー」シリーズなどで若々しく荒々しいアクションスターを演じてきたイーストウッドも老齢の域に入って実に良い感じの演技派俳優さんになってまいりました。ことに自らの老いを作品に生かした諸作、まぁ「許されざる者」(1992)はあまり好きではありませんが「スペースカウボーイ」(2000)など実に良かったですね。で、本作も同様に年相応のイーストウッドが生き生きと描かれています。本作での役柄自体、若い頃からムチャやって上司の覚えも悪く、じいさんになっても相変わらずムチャやってるという・・・まぁハリー・キャラハンがそのまま歳を取ったっていうイメージですか(笑)。それにしてもイーストウッドの相棒の死亡率はめちゃくちゃ高いような気がします。

そして暗殺者を演じるのがジョン・マルコヴィッチですが、これがまたいい。狂気を感じさせつつも冷静沈着な暗殺のプロを見事に演じ、キャラクターのインパクトで見事にイーストウッドを喰っちゃってます。特に好きなのが湖で自作拳銃のテストをしているシーン。ここら「ジャッカルの日」(1973)の暗殺者エドワード・フォックスが思い出されたりします。
そしてこの男が元CIAの暗殺専門エージェントだったことが明かされるあたりで、映画の緊張感が一気に高まるのが楽しい。

この魅力的な二人の男の対決を演出したのがウォルフガング・ペーターゼン監督。その得意の骨太な演出で描かれた本作は「U・ボート」(1981)に次いで好きな作品となっています。ただ本作以降「アウトブレイク」(1995)や「エアフォース・ワン」(1997)「パーフェクトストーム」(2000)あたりを見ていますが、今一つピリッとしない作品が多いのが気になるところ。

ところでオリジナルでは128分ある本作、今日は40分ほどカットでの放送となってますね。ヒドいけど・・・でも妙にスピーディでこれはこれで良かったような気もしたり(笑)。昔、東京12ch系やローカル局の映画劇場は90分枠とかが普通で、これくらい当たり前にバサバサカットしていたんだよなぁとなんだか懐かしく感じてしまいました。

放送記録:2006年09月16日PM07:30~09:16サンテレビ「シネマスタジアム」

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