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今日のサンTV「シネマスタジアム」は先週の「マンハッタン無宿」(1968)に続きクリント・イーストウッド主演、そして「荒野の七人」(1960) 「大脱走」(1963) 「宇宙からの脱出」(1969)等の名匠ジョン・スタージェス監督による渋い娯楽西部劇でした。
「シノーラ」(1972)
JOE KIDD
メキシコの小さな町シノーラで、移民してきたアメリカ人によって先祖伝来の土地を奪われたと暴れ回るメキシコ人の一団。その無法に対し、怒りに燃える大地主が立ち上がった。
と書くと、いかにもありがちな西部劇ドラマですね。特にメキシコ人をインディアンに置き換えれば、さらにありがち感が増します。
本作の2年前、それまで映画の中で正義のヒーローとして描かれていた騎兵隊による残虐非道なインディアン虐殺を描いた「ソルジャー・ブルー」(1970)が作られました。インディアン(ネイティブ・アメリカン)を否定的に描くことが問題視され、それまで全盛を極めていた(白人至上主義的な)オールド西部劇が姿を消しつつある時代でした。
そうした流れの中で作られた本作は以前ならばインディアンに割り振られる役割をメキシコ人に置き換え、西部開拓の名の下に彼らの土地を奪い続けた白人に対する彼らの怒りを代弁しようとしたのかもしれません。
とは言え、そこは多数の西部劇をふくめ数々の娯楽作を撮り続けてきたスタージェス監督のこと、そのドラマは実に明快で娯楽性に満ち、あくまでもオーソドックスな演出は安心して見ていられます。
イーストウッド扮するは腕は確かだが酔いどれのだらしない男ジョー・キッド。キッドは町の大物ハーランから荒野の道案内を頼まれます。その旅の目的は土地を奪い返そうとするメキシコ人一派のリーダー、チャマを殺すことでした。
最初は興味がないと断るキッドでしたが、白人を憎むチャマのグループに友人を殺されたことで旅に加わることを決意するのです。
主人公ジョー・キッドは「荒野の七人」のクリスやジョン・ウェインのような正義感溢れるヒーローとは描かれません。ハーランが捕らえたチャマの恋人を犯しても、無関係なメキシコ人を撃ち殺しても、キッドは怒りを感じながらも体を張ってまでそれを止めようとはしません。ここら辺の主人公像はどちらかと言えばマカロニ・ウエスタンの流れを感じますし、イーストウッドが演じることでなおさらその思いを強くします。
そしてついにハーランがメキシコ人の村を襲撃してチャマをおびき出すために村人たちを処刑しようとした時、そしてチャマとの戦いに参加しなかったキッド自身までもがハーランの囚われの身となった時、ついにキッドは行動を開始します。
ここらへん、ハーランの残虐な行動から村人を守るためか自身の身を守るためか、キッドの行動原理がはっきりとしないのがやや難にも感じますが、キッドの飄々としたキャラクターからすればこれでいいのでしょう。
チャマと接触したキッドはチャマに対して裁判に訴えるよう説得します。これもまた西部劇らしくない地味な展開ですが、面白い展開でもありますね。
クライマックスはハーラン一味が待ち受けるシノーラの町に乗り込んでいくキッドとチャマ。キッドは蒸気機関車を使って町中に突入し、激しい銃撃戦の末にハーランを倒すのでした。
しかしこの機関車が建物に突っ込んでいく派手な見せ場も、銃撃戦も、スタージェス監督の演出は妙にのんびりしていて緊迫感がありません。ハーランの手下も何人か倒されたところであっさりと降参してしまいますし。こののんびり感は派手なアクション西部劇を期待していた向きには肩すかしぽく感じますが、極力本作では人の死を描きたくないという監督の意志のようなものも感じます。
残酷な町の大物ハーランを演じるのは名優ロバート・デュヴァル。その冷静にして徹底した悪役ぶりは見物でした。
そしてキッドとの間にいつしか友情すら感じさせる人間味溢れるメキシコ人リーダーのチャマを演じるのが数多くの作品で活躍する名脇役ジョン・サクソン。その出演作はマイナーなB級作品が多いのですが、「燃えよドラゴン」(1973)やアルジェント監督の「シャドー」(1982)など印象的でした。
放送記録:2005年11月30日PM7:30~9:15サンTV「シネマ・スタジアム」
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