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ところで、
昨日のエントリーで「仄暗い水の底から」(2001)が様々な作品からの寄せ集めと感じると書き「13日の金曜日」(1980)等を例としてあげました。が、実は見ている間中それ以上に強烈に思い出されるもう一本の映画がありました。
その作品と「仄暗い水の底から」の共通キーワードは
「水」「浴槽」「溺れた子供の幽霊」「哀しみと共感」そして「何度捨てても帰ってくる子供の持ち物」。
交通事故で妻と幼い娘を一度に失ってしまった作曲家。彼は人付き合いを嫌い、一人哀しみを忘れ作曲活動に勤しむため郊外の古い屋敷に引っ越します。妻子の遺品を目に付かぬように箱に仕舞い込みようやく落ち着きを取り戻し始めた頃、屋敷の中で不思議なことが起こり始めるのです。
突然屋敷の中に響き渡るドーンドーンという何かを叩くような音。誰もいないはずの2階の浴室から聞こえる水の音。何度箱の中に戻してもいつの間にか外に出ている娘が遊んでいたボール。そして隠されていた屋根裏の小部屋で見つけたオルゴールから流れる旋律は、たった今彼が作曲したばかりの曲なのでした。
この屋敷に隠された謎を解き明かそうとする彼は、ある夜再び響き渡る音に浴室へと飛んでいきます。そこで彼が見たものは、浴槽の水の中に浮かぶ幼い少年の苦悶の表情。溺れ死のうとする少年のその腕が水の中で浴槽に何度も打ち付けられ、その音がドーンドーンと辺りに響き渡っていたのでした。
少年はかつてこの場所で殺されたのか? 誰に? 何故? そして何を訴えようとしているのか。
物語はオーソドックスな幽霊屋敷モノであり、その描写は地味です。しかし怖い。
特に何度も目の前に現れるボールをついに遠くの川へ放り込んだ主人公が屋敷に帰ってきたシーン。暗い階上へと続く階段から聞こえてくるポーンポーンという音。それはゆっくりと弾みながら階段を落ちてくる濡れたボールでした。このシーンの見事な演出も相まってのゾクリとする怖さはいまだに忘れられません。
この映画が公開された'70年代後半といえば後のスプラッターブームに続く残虐なホラー映画が全盛になりつつある頃でした。しかしその中で本作は異色とも思えるほどにオーソドックスなゴシックホラーの流れに沿って作られ、人を怖がらせるのにむやみやたらな残虐なショックシーンなど必要ではないと教えてくれた作品でもありました。
主人公は街の歴史記念館の資料からこの屋敷の記録が抹消されていることを知り、屋敷と少年に隠された秘密を解き明かそうと考えます。そして明かされる驚くべき真実とは何か。その時「チェンジリング」というタイトルの意味もまた明らかになるのです。
本作の特徴は本当に怖いホラー映画というだけではなく、その中で描かれる哀しみや優しさこそが本質部分であったと思えます。失ってしまった我が子と幽霊の少年をいつしか重ね合わせ、少年への慈しみの感情と共にその哀しみや訴えに答えてやろうとする主人公。我が通らない時の幼い子供さながらに荒れ狂うポルターガイスト現象を前にして父親のごとく一喝する主人公のシーンは、恐怖よりもむしろほほえましさすら感じる名シーンでありましょう。
主人公の作曲家に名優ジョージ・C・スコット。物語の鍵を握る老富豪にやはり名優メルヴィン・ダグラス。この二人の重厚な演技が物語をしっかりと支えます。
怖さと優しさが同居した、この作品はマイナーなのが勿体ないほどの完成度の高い傑作でありました。
ところで本作が劇場公開された時、主題歌をヒカシューが歌っているのが話題になりました。当時は日本で勝手に主題歌を作ってエンディングに流して公開ということが結構ありましたね。傑作「ナイル殺人事件」(1978)などもエンディングで流れる勝手に主題歌「ミステリー・ナイル」が非常に印象深かっただけに、歌が流れないオリジナル版を見るとどうしても物足りなく感じてしまうのが困りものであります。
ところでところで、「仄暗い水の底から」を見た後2chの実況板を覗いてみたのですが、何度も帰ってくる赤い鞄についてこんな書き込みがありました。
>343 名前:名無しさんにズームイン![sage] 投稿日:2005/11/25(金) 22:50:13 ID:viv/rXxi
>旅行先で買ったお土産をあのカバンの中に入れて
>その辺にほおって置けば、帰ったときに家に勝手に
>戻ってくるという寸法だな
ナイスアイデア!(笑)
「チェンジリング」鑑賞劇場記録:梅田・ニューOS劇場(旧)・・・だったと思います
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