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映画のコトやら何やら綴りませう
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なんともおどろおどろしいタイトルの作品ですが、その昔はちょくちょくTVで放送されていたものです。私も2~3度は見ましたが、初めて見終わった時は何とも奇怪なゾンビ映画のバリエーション作品を見たものであったなぁと少しブルーな気分で思ったものです。舞台はほぼ高層マンションの中だけに限定された見るからに低予算作品でしたが、しかし妙に心に残る映画でもありました。
この作品がデビッド・クローネンバーグ監督の初長編作品「シーバース」だと知ったのは「スキャナーズ」(1981) が日本で公開され話題になっていた頃でしょうか。

「シーバース」(1975)
SHIVERS

舞台はカナダ、モントリオールからほど近い島に建つ新築の高層マンション。いきなりTV画面に映し出されるのはパンツ一枚以外は全裸の少女がテーブルの上に横たわっている姿。眠っているのだろうか、それとも死んでいるのか。そこに被るTV邦題「SF人喰い生物の島」。上半身裸のハゲデブのオッサンがテーブルの向こうに立っている構図が何とも奇妙で興奮を誘う。が、予想に反してオッサンは手に持ったメスでいきなり少女の腹を切り開く。そしてその中に何かの薬品を注ぎ込んだ後、オッサンは自らの首をメスで切り裂いて自決するのだった。

ショッキングなオープニングです。この少女、非常に可愛らしくて小さめのオッパイも綺麗で、その点も本作が記憶に残る大きなポイントでもあります。が、その少女の可愛さが余計にこの(映像として傷口などは映らないものの)グロテスクなシチュエーションを引き立てます。
この映画、所謂スプラッターシーンなどの映像としての残酷さエゲつなさはかなり控えめです。その代わり、精神に来るグロテスクさは実に強烈。

オープニングで自殺したオッサンは少女を殺す為に彼女の腹を切り開いたのではないということが展開と共に明らかになってきます。彼は生物学者で、人の不全な内臓の代役を果たす寄生虫の研究をしていました。それは内臓疾患を持った人々にとって大きな福音となるはずでした。しかし徐々に狂気に犯された彼は、人間そのものの生命力や生存本能を活性化させたいと考え始めていたのです。人類が本来持っている本能を埋もれさせたのは後天的な常識やモラルである。ではそうしたものを取り払えばいいではないか。
彼は動物の最も根元的な欲望である性欲を強烈に高める寄生虫を生み出し、教師時代の教え子である少女の肉体を使って実験しました。予想通り少女はモラルを失いマンションの他の住人と次々に関係を持っていき、実験は成功に思えました。しかし彼の予想できなかった事態が密かに進行していたのです。寄生虫は少女の腹の中で増殖し、性交や口づけを介して関係を持った相手に感染することが分かったのです。彼は少女の腹の寄生虫を薬品で殺した後、自らも自殺することで研究の全てを闇に葬ろうとしました。しかし、すでに寄生虫はマンションの住人達の間で猛烈な勢いで増殖しつつあったのです。

寄生虫は体外に出されると強酸性の体液を滲ませながら凶暴化したりするものの、TV邦題にあるような「人喰い生物」ではありません。おそらくは寄生されてモラルを失った人々の姿がゾンビのようにも見えるところからこのタイトルが付いたのでしょうか。日本でゾンビの名を一躍知らしめたジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」(1978)よりも本作は前の作品ですが、性衝動に突き動かされるまま老若男女を問わず襲いかかっていく感染者の描写は同じロメロのゾンビシリーズ第一作「生ける屍の夜/NIGHT OF THE LIVING DEAD」(1968)の影響を受けていることは明らかでしょう。

自らの繁殖のために寄生した人間達を性欲にまみれさせる寄生虫。そして活性化させられた性本能のままに他の住人達に襲いかかり蹂躙する人々。映画では女性の胸の露出がけっこうあるものの直接的なSEX描写などは無く、多くを見る人の想像に任せています。しかしそのシチュエーションのアンモラルなエロティシズムとグロテスクさは恐るべきものです。
美しい若妻に迫る友人の女性やパンツ一丁でマンション内を徘徊する男性同士のカップルといったレズゲイ描写はほんの手始めで、愛らしい娘を自慢げに抱きしめる父親、首輪を付けられ四つんばいになって喜々として犬のように散歩させられる二人の幼い少女、幼女の目の前でレイプされる母親、管理人室での乱交やマンションのそこここで起こる集団レイプ、等々。モラルを失った人々が生み出す恐怖と嫌悪と興奮がない交ぜになった感情が見る者を襲います。
デビッド・クローネンバーグが本作の脚本を書き、監督したのが32歳の頃ですか。低予算の限界もあったろうし荒削りな部分も多々見られるものの、後の作品に続く奇怪で優れた才能が光った作品であります。

主人公は舞台となるマンション内で診療所を開く医者。彼はいち早く寄生虫の存在に気づくものの、その対応が後手後手に回ったことと寄生虫の拡散のあまりの早さになすすべもなく、一夜のうちにマンションの住人も恋人も寄生されてしまいます。そしてマンションから脱出しようとする彼も・・・。
この重くて鬱になる展開とエンディングは'70年代ホラーの特徴と言ったところでしょうか。

ところでクローネンバーグ監督のインタビューによると監督の名が知られて本作が海外で上映されたりした頃、「エイリアン」(1979)のパクリではないかというクレームをよく受けたとのこと。「スキャナーズ」(1981)や「ビデオドローム」(1982)の成功で知名度が上がった頃の話でしょうか。
寄生虫が人間の腹の中に巣くっていたり(腹を食い破って体外に出てくる描写もあり)、強酸性の体液だったり、人間の顔に張り付いて口から進入したり、とまあ確かに「エイリアン」との共通点がありますね。しかし制作年を見れば分かるとおり本作は「エイリアン」より古い作品です。むしろ「エイリアン」の原作者であり脚本を書いたゾンビ映画好きのダン・オバノンが本作を見ている可能性が高く思えます。
それと上のシチュエーションで書いた若妻に迫る友人の女性を演じているのがバーバラ・スティールだったりします。「血ぬられた墓標」(1960)「恐怖の振子」(1961)など多くの古典ホラー映画に出演していた女優さんです。その独特な美貌にホレていた人は数知れず。こうした往年の怪奇スターを自作に呼んでくるのはティム・バートンやジョー・ダンテ、ジョージ・ルーカス等のオタク監督の共通項かなぁ、なんてちょっと面白く思ったりもしますね。そう言えばスティールはダンテ監督のデビュー作「ピラニア」(1978) にも出ていましたね。

ところでところでTVで本作を見た当時、オープニングは上記のように裸の少女が殺されるシーンから始まり、ラストは主人公の医師が室内プールで住民の群れに追いつめられるシーンで終わっていたものですが、近年ようやくノーカット版を見るとその前後に本当のオープニングとエンディングがあったのですね。当時見た映画枠は深夜やお昼の映画劇場等1時間半枠(実質本編75分前後)での放送でしたので本編内も含めて結構カットされていたわけです。真のオープニングは新築高層マンションの夢のような生活を紹介するCMから始まって上記のシーンに繋がるわけですが、このオープニングはその後の地獄絵図を際だたせるためにも重要なものだったと思います。
しかし今はこういった作品も気軽にDVDとかで見られるのは幸せなことですねぇ。「ビデオドローム」の海外版ビデオを探し回っていた頃が夢のようですよ。

SHIVERS01

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