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先日友人と電話で話していまして、いつしか映画の話題になりました。で、最近の映画はCGを使いまくりで、逆にリアル感を削ぐことが多々あるよね~、と。例えばヤン・デ・ボン監督の「ホーンティング」(1999)。屋敷の壁に彫り込まれた子供の顔がCGで面白いようにグリグリ動きますが、それがあまりにも動きすぎるんで作り物にしか見えず、リアル感も恐怖感も無し。
こういうのはむしろ目の前でグリグリ動きまくるより、ふと目を離して次に見ると徐々に変化しているなんて古典的な手法の方が怖いのではないか。とまぁ、そんな話になったときにまざまざと思い出したのがコレ。
「怪奇!真夏の夜の夢」(1969)
NIGHT GALLERY
「ミステリーゾーン(トワイライト・ゾーン)」(1959~1965) の脚本&解説でお馴染みロッド・サーリングが同じく脚本と解説を担当して「絵画」をテーマにした怪奇TVシリーズ「四次元への招待」ROD SERLING'S NIGHT GALLERY(1970~1973)のパイロット版として制作されたTVムービーであります。その昔には夏場になると何度もTVで放送されていたものでした。
3話のショートエピソードからなるオムニバス作品である本作ですが、上記の古典的手法で怖がらせてくれるのがその第1エピソードです。
画家である叔父を殺して遺産と屋敷をまんまと手に入れた主人公。屋敷玄関の広間には叔父の描いた墓場の絵が飾られているが、叔父の遺体はまさにその絵に描かれた屋敷そばの墓場に埋葬された。
さて嵐が近づき豪雨が屋敷を襲うある夜、主人公は広間に飾られた絵を見て愕然とする。描かれていた墓場が、いつの間にか掘り起こされたような絵に変わっていたのだ。いったい何物の悪戯なのか。だが彼が目を離し、そして再び絵を見たとき、絵には墓穴から這い出す死体の姿が描かれていた。
それから彼が目を向ける度に絵は変化していく。墓穴から這い出した死体は徐々に屋敷へと近づいてくるのだ。恐怖に怯える主人公。そしてついに絵の中の死体が屋敷の玄関にたどり着いた次の瞬間、激しくドアを叩き付けるドンドンドンドン!という音が響き渡った。
【ご注意、ここからラストのネタバレです】と、一応書いておこう(笑)。
主人公はあまりの恐怖に心臓麻痺を起こして死んでしまう(階段から足を滑らせてだったかも)。と、その様子を見て一人の人物がほくそ笑みながら姿を現すと、広間の絵を外して隠してあった最初の墓場の絵を元に戻した。彼は次の遺産相続者(たしか弟?)で、複数の絵を順次掛け替えることで主人公をショック死に導いたのだ。
まんまと遺産を手に入れたと喜ぶ男。だが彼は広間の絵を見て彼は愕然とする。絵の中の墓場が掘り起こされていたのだ。そんな馬鹿な。慌てて自分が用いた例の絵を調べるが、その絵は確かにその中にあった。どういうことかと再び壁の絵に目をやると、いつの間にか絵の中の墓穴から死体が二つ這い出そうとしている。そして彼の見ている前で、絵は目まぐるしく変化していく。二体の死体は屋敷へと近づき、玄関の前に立った。恐怖に怯えながら彼が玄関のドアに目をやった瞬間・・・
ドンドンドンドン!
主人公に気づかれることなく絵を取り替えていくというのはかなり無理のあるトリックだとは思いますが、しかし恐怖感の盛り上げは演出もあいまって見事なもの。そして犯人の恐怖の表情や変化していく絵をスピーディーなカットバックで見せるラストはショッキングでありました。
さて、本作の第3エピソードもこれまた記憶に残る怖いお話です。
元ナチスの戦犯である主人公。彼は安アパートに身を潜めながら何時発見され逮捕されるかもしれないという恐怖に震え、夜もまともに眠れないような生活を続けていた。そんな彼の最近の日課は近所の美術館に出向くこと。そこには貼り付けになった血塗れのキリストを描いたようなおどろおどろしい絵画もあるけれど、その側に展示された風景画が彼の目当てだった。山々や緑の木々に囲まれた湖を描いた平和で美しい絵。その湖面には小さなボートが浮かび、一人の男がのんびりと釣り糸を垂れている。主人公はこの絵に心囚われ、出来ることならこの平和な絵の中の世界に逃げ込みたいと考えながら何時間も見入っていた。
そんなある夜、疲れでうとうととした彼は不思議な夢を見る。あの絵の中の世界が夢の中で現実となり、ボートの男がにこやかに笑いながら手招きしているのだ。目を覚ました主人公を待っているのは厳しい現実。絶望しながら再び美術館に向かった彼は、絵の中に描かれた男が実際に手招きするのを見た。それは夢の続きなのか、幻なのか。もしかしたら、強く念じ続ければ実際に絵の中に入ることが出来るのかもしれないと彼は思い始めた。
そんなある夜、突然彼のアパートのドアが激しくノックされた。ついに彼の居場所を突き止めた警察が踏み込んできたのだ。なんとかアパートを抜け出した彼は美術館へと逃げ込んでいた。真っ暗な館内。しかし通い慣れた彼は闇の中で問題なく例の絵へと向かった。彼を捜す警官隊の声が近づいてくる。彼は、闇のその向こうに有るはずの風景がに向けて祈った。どうか、自分をその絵の中に逃がしてくれと。
【ご注意、ここからラストのネタバレです】
翌朝、美術館の職員が昨夜の事件を語り合っていた。どうやら主人公は逮捕されることなく姿を消してしまったという。そういえば、と一人が言う。絵の掛け替えはもう終わったのかい? ああ、昨日の閉館後にやっておいたよ。ほら、あれだ。そこには壁から外された例の風景画が。では主人公はこの絵の中に逃げ込んだのではないのか。
風景画が掛かっていた壁には、今は別の絵が展示されていた。それはあの血塗れのキリストの絵。そのキリストの顔はいつの間にか主人公のものに変わっていた。
ふと、職員達はどこからともなく小さな男の悲鳴を聞いたような気がした。
このエピソードではとにかく前半の主人公の焦燥感の演出が恐ろしいです。そして平和な絵の中の世界に誘われる幻想の美しさが、ラストの強烈なオチを盛り上げます。そのあまりに悲惨なラストに、もうとにかく主人公が気の毒でならなかった記憶があります。
ところで、本作が意外と知られているのには理由があります。これがかのスティーヴン・スピルバーグ監督の商業デビュー作なんですね。
でも、あれっ? スピルバーグ監督の担当した第2エピソードの記憶がないですよ? 実は本作が日本でTV放送された際、時間の都合で第2エピソードがカットされたんですねぇ。日本で初放送されたのが1972年ということらしいんで、日本では出世作となる「激突」(1972)が公開される前。放送がもう少し後だったなら「あのスピルバーグの」ってんで売り出したところでしょうけど、当時としては無名の新人監督ということでワリを喰っちゃったわけですね。
さてロッド・サーリングですが、「ミステリーゾーン」や「四次元への招待」といった優れた怪奇TVシリーズを作る一方、多くの映画やTVムービーの脚本も担当しています。中でも「夜空の大空港」(1966)という作品が大好きだったりします。旅客機に一定の高度以下に下がると爆発する爆弾が仕掛けられて着陸できなくなるという、'70年代に大ヒットした「エアポート」シリーズの原点的な航空パニック作品です。そのサスペンスフルな展開はパニック映画好きなら必見であります。
(と昨日書き込もうとしたら重くて出来ませんでした)
昔「四次元への招待」のタイトルでビデオ化されていたと思いますが、どうもとっくに絶版みたいですねぇ。場末のレンタル屋とかに残っている可能性もあるかも。
ところでもしかしたら誤解を与えているかもという気がしたので追記。
本作は3つのエピソードを3人の監督がそれぞれ演出していまして、スピルバーグが監督したのは日本のTV放送でカットされた第2エピソードだけです。
他の2人は「0011ナポレオンソロ」や「警部マックロード」等多数のTVドラマや映画の演出を手がけたまあベテラン演出家で、本作がデビュー作のスピルバーグが格下扱いになったのは仕方なかったところでしょう。
しかしまったくの新人でありながら新番組の大切なパイロットフィルムに抜擢された事自体、スピルバーグがいかに評価されていたか分かります。本作の後スピルバーグは「刑事コロンボ」の本放送第1話を任され、そして「激突」。いやはや恐るべき新人だったんですよね。
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