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子供の頃、何度もTVで放送され何度も繰り返し鑑賞した思い出深い映画っていろいろあります。特にSFや怪奇作品が好きだったわけですが、SFに限って上げるなら「禁断の惑星」(1956)「宇宙戦争」(1953)「宇宙水爆戦」(1954)「SF人喰いアメーバの恐怖(マックィーンの絶対の危機)」(1958)「地球は壊滅する」(1965)「アンドロメダ・・・」(1971)等々等・・・。その他もろもろ、いずれ劣らぬ大好きな作品が数多くあるのですが、そんな中でも不思議な印象を後々まで残す作品が2本あります。
1本はドラキュラ等怪奇映画でお馴染みだった英ハマープロ制作の傑作、クォーターマス博士シリーズの第3作「火星人地球大襲撃」(1967)。
そしてもう1本が・・・
「人類SOS!」(1962)
THE DAY OF THE TRIFFIDS
ある夜、無数の流星雨が流れる素晴らしい天体ショーに世界中の人々が見入っていた。しかし翌朝、流星雨を目にした人々が皆失明していたのだ。同時に流星雨に乗って地球上にばらまかれたとおぼしき食肉植物トリフィドが急成長し、根を使って地上を徘徊しながら人間を襲い始めた。盲目になった人々はトリフィドの餌になるしかないのか。トリフィドを絶滅させ、人類を救う術はあるのか。失明を免れた僅かな人々のサバイバルが始まる。
原題を見て分かるとおり、これはジョン・ウィンダムの書いたSF小説の古典「トリフィドの日」の映画化作品です。しかしこの映画化作品では原作を大胆にアレンジし、人間とトリフィドとの行き詰まる戦いをストレートに描いたスケールの大きな一級のサスペンス作品に仕上げられています。
主人公は目の手術で包帯を巻いていたために流星雨を見ることを免れた船乗り。駅で拾った孤児の少女と共にロンドンを脱出し、フランスからスペインへとサバイバルを繰り広げることとなります。それと平行して描かれるのは海の真っ只中の岩礁に建つ灯台で暮らす科学者夫婦で、こちらは隔絶された小さな世界で徐々にトリフィド達が迫り来るという密室サスペンス風味。ここらへんの構成が上手い。様々なタイプのサスペンスシーンが息も切らせず展開していきます。
監督はフレディ・フランシスとスティーヴ・セクリー。フレディ・フランシスと言えば傑作「がい骨」(1965) を始め「残酷の沼」(1967)「テラー博士の恐怖」(1964)「帰って来たドラキュラ」(1968)等多数のホラー映画を撮ってきたホラー映画界の大御所監督で、なるほど本作の迫り来る怖さも納得。また傑作古典ホラー「回転」(1961) やデヴィド・リンチ監督の「エレファント・マン」(1980)「砂の惑星」(1984) 、「グローリー」(1989)や「ケープ・フィアー」(1991)等々で撮影を担当した人でもあります。
一番強く印象に残っているのは終盤、主人公と少女がたどり着いた盲目の夫婦が暮らす農家で金網の柵に電流を流してホッとしたのもつかの間、翌朝起きてみると柵の向こうに見渡す限りに無数のトリフィドが集まってきていたというシーンです。これは子供心に本当にゾッとしたシーンでしたし、当時の特撮技術を考えても映像的に素晴らしいものでした。
中盤では森の中の屋敷で失明した多くの人の世話をする老婦人が登場しますが、その屋敷がトリフィドの群れに襲われた時に失明した人々を見捨てて婦人だけを連れて逃げる主人公の素早い決断にも、もはやこのサバイバルの中では盲目の人々は足手まといでしかないというそれまでの映画にない冷徹さが感じられて衝撃的でありました。
それにしてもこうした古い作品がTVで放送されることがめっきり少なくなり、本作も長らくもう一度見てみたいものだと思っていました。それが何と昨年ですがDVDになったのですよね。2作品を1枚のDVDに収めた2in1というやつで画質ははっきり言って良くありませんが、本作との再会は感動的でもありました。
今回再見して記憶を新たにしたのは、序盤で失明した人々がさまよい歩くロンドン市街のシーンや、後半のそこら中に車が乗り捨てられている無人のパリ市街のシーン。この市街の寒々としたシーンは見事で、どうやって撮影したものか。そしてまず頭に浮かんだのは数年前に公開された「28日後...」(2002)での無人のロンドン市街のシーンでした。思えばロンドン市民に奇病が蔓延する中、主人公が入院していたおかげで無事でいられるという設定からしても、「28日後...」が本作の影響を受けている可能性は高そうに思えます。
それと、「人類SOS!」には主人公達が立てこもる家に食人のトリフィドたちが迫り来るというシーンが何カ所かあります。これはジョージ・A・ロメロ監督の「生ける屍の夜/NIGHT OF THE LIVING DEAD」(1968)におけるゾンビの群れに襲われる一軒家という設定との大きな共通点と言えます。昨年出た2in1のDVDで本作と共に収録されているのが「生ける屍の夜/NIGHT OF THE LIVING DEAD」の原点と言われる古典SF「地球最後の男」(1964)であるというのもよく考えられたカップリングだと思えますね。
ところで本作と「火星人地球大襲撃」はどちらもイギリス作品なんですよね。SFにしろホラーやミステリーにしろ、不思議とイギリス製のものが妙に肌に合うと言うか気に入ることが多いです。米国製のどこかおおらかで脳天気な作品も悪くないのですが、英国製のどこか生真面目で理詰めな作風が好きなんですね。
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