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映画のコトやら何やら綴りませう
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長々と書いてきました本項ですが、ようやく今回で終わりです。

さて世はSFブームの真っ只中、'60年代にSFドラマのブームを作り出したアーウィン・アレンにとって活躍の機会だったかもしれません。しかしアレンはパニック大作を作るという呪縛から逃れることが出来ませんでした。「スウォーム」(1978)「ポセイドン・アドベンチャー2」(1979)と続けざまに失敗作を送り出しながらも・・・。

(5)1980~:そして伝説へ

「スウォーム」と「ポセイドン・アドベンチャー2」の失敗をアレンはどう見ていたのでしょう。とにかく自身の演出力に問題有りと考えたのかどうか分かりませんが、次なる作品では別の監督を立ててアレン自身は制作者の立場に退くことになりました。
しかしそうして完成した作品は、前2作に劣らない緊張感のない空虚な大作としてファンの前に姿を現したのでした。

「世界崩壊の序曲」THE DAY THE WORLD ENDED(1980)
本作の制作が最初に伝えられた時、その仮邦題は「地球最後の日」だったと記憶しています。期待しました。あの「タワーリング・インフェルノ」(1974)を作ったアレンが、もしかしてジョージ・パル制作の名作「地球最後の日」(1951)をリメイクしているのかもしれない。そうでないとしてもアレン得意のオールスターキャストによるSFパニック超大作であることは間違いないと期待に胸を膨らませたものでした。
そして正式な公開タイトル「世界崩壊の序曲」が発表。
キャストはポール・ニューマン、ジャクリーン・ビセット、ウィリアム・ホールデン、アーネスト・ボーグナインにバージェス・メレディスと実に豪華。ポスターアートを含めパルの「地球最後の日」とはどうやら関係なさそうではありましたが、もしかして大好きなSF映画「地球は壊滅する」(1965)に類するようなスペクタクル作品かも、と期待が萎えることはありませんでした。
しかし・・・

リゾート開発の進む南海の小島で火山が爆発する――。

まるで前出の「地球は壊滅する」のイントロ部を2時間に引き伸ばしたような内容でした・・・orz
邦題と言い原題と言い、この風呂敷の広げようは何なのでしょうか。いえ、それは100歩譲ったとして、作品そのものが面白ければ問題は無いのです。けれど前半のダラダラとした陳腐なドラマといいクライマックスの安っぽ過ぎるアナクロな特撮シーンといい、見事なまでに緊張感の無い作品に仕上がっていたのでした。

「スターウォーズ」(1977)、「未知との遭遇」(1977)、「エイリアン」(1979)、「スター・トレック」(1979)。これまで見たことのない特撮映像を次々と生み出していくSFブームの真っ只中で、そしてオールスターキャストの超大作でありながらこの恐ろしいまでの時代錯誤ぶりは何なのでしょう。
そして同時に本作が恐ろしいのは、あたかも過去のアレン制作パニック作品の集大成と言わんばかりにどこかで見たようなシーンが現れることでした。
例えば・・・

◎島では豪華リゾートホテルの完成披露パーティが行われ、各界の著名人たちが招待されていた。
◎超高層ビル・グラスタワーの最上階では完成披露パーティが開かれ、各界の著名人たちが招待されていた。(タワーリング・インフェルノ)

◎火山噴火の危機に気づいたポール・ニューマンはホテルのオーナーに避難を呼びかけるが一笑に付される。
◎火事発生に気づいたポール・ニューマンはグラスタワーのオーナーに避難を呼びかけるが一笑に付される。(タワーリング・インフェルノ)

◎火山噴火。ポール・ニューマンはホテルの宿泊客に避難を呼びかけるがオーナーが反論。「ここに留まる方が安全だ」。
◎船転覆。ジーン・ハックマンは乗客達に脱出を呼びかけるが船長が反論。「ここに留まる方が安全だ」。(ポセイドン・アドベンチャー)

◎ポール・ニューマンは一部の客と共にホテルを離れる。直後、火山弾がホテルに直撃して残った人たちは全滅する。
◎ジーン・ハックマンは一部の客と共に船内パーティ会場を離れる。直後、海水が雪崩れ込んで残った人たちは全滅する。(ポセイドン・アドベンチャー)

◎脱出行の先に今にも焼け落ちそうな吊り橋。同行する客の中から一人の老人が進み出て言う。「わしは昔サーカスで綱渡りをやっていたんじゃ」。
◎脱出行の先の通路が水没していて通れない。同行する客の中から一人の老婦人が進み出て言う。「私は昔水泳の選手だったの」。(ポセイドン・アドベンチャー)

とまあ、こんな調子でドラマの展開がことごとく過去の作品を焼き直しているのです。これもアレン作品のセルフパロディと思えば楽しめそうな気もしますが、しかしそういう意図は無く大まじめに見せられるだけに困ってしまうのでした。
この無能な脚本は「スウォーム」に続いてスターリング・シリファント。「ポセイドン・アドベンチャー」「タワーリング・インフェルノ」の脚本も担当した人ではありますが、この名作2本の出来が奇跡であったことを改めて思い知らせてくれました。

この「世界崩壊の序曲」は当然のごとく酷評され、アレンの輝かしい歴史は終わりました。
'60年代から'70年代前半にかけて常に時代を先取りしてきたアレン。しかし最後の最後で彼は時代を読み違えてしまったのでしょうか。しかしそれでも、「ポセイドン・アドベンチャー」「タワーリング・インフェルノ」と言う傑作を生み出したことでアレンの名は永遠に映画史の中に輝いているのです。

そしてふと思うのです。'50年代を思わせるようなアナクロなSF映画が乱作され、「ポセイドン・アドベンチャー」を始め過去の傑作スペクタクル映画が次々とリメイクされる今、アレンが生きていたなら喜々として新作超大作を制作していたのではないか、と。
1991年、アーウィン・アレンはその生涯を閉じたと聞きます。

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