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1977年に公開されたイタリアの怪奇映画「サスペリア」。その原色に彩られ、計算され尽くされた映像と音楽。あえて毒々しいまでに作り物めかせた作風の、ファンタジックなびっくり箱は本当に衝撃でした。
その翌年に公開された「サスペリアpart2」(1975)は邦題とは違って実際には「サスペリア」の前作にあたる作品ですが、ここでも完成度の高いミステリー・ホラーを見事に作り出していました。
イタリアンホラーの巨匠ダリオ・アルジェント。
完璧主義者アルジェント監督のデビュー作であり、そして傑作「サスペリアpart2」のオリジナルとも言われる作品がこの・・・
「歓びの毒牙(きば)」L' UCCELLO DALLE PLUME DI CRISTALLO(1969)
それまで脚本家として活躍していたアルジェントは新たに書き上げた本作の脚本を気に入った余り、他者の手に委ねるのを嫌って自分自身で監督することにしたと言います。
なるほど、確かに面白い。主人公が偶然事件を目撃してしまったことから連続殺人に巻き込まれていく展開はサスペンスホラーの常道ではありますが、その中に組み込まれた様々な仕掛けや、荒削りながら後のアルジェントの作風を思わせる映像が緊張感を途切れさせることなく観る者を映画の中へと引き込んでいきます。
冒頭、イタリアを訪れていたアメリカ人作家が女が革手袋の男に襲われているところを目撃します。すぐさま助けに入ろうとしたところで2重のガラス扉の間に閉じこめられ、血を流して苦しむ女性をただ見ているしかない主人公。この設定の面白さ。
主人公を演じるトニー・ムサンテとアルジェント監督はとにかく撮影の間中対立していたと言います。自分の脚本を完璧と信じて変更は不必要と考えていたアルジェント。その後の作品でも常に映画のすべてを自身でコントロールするアルジェントにとって、なにかと独自の解釈を作品に付け加えようとする役者は不愉快な存在だったのでしょう。そしてアルジェントはそんなムサンテをガラスの檻の中に閉じこめ、事件をただ傍観するしかない立場に追い込む前出のシーンを撮ったとドキュメンタリー「鮮血のイリュージョン」(1986)で語っていたのを思い出します。役者との対立があのユニークな構図を産んだとするなら、なんとも愉快な気分になります。
しかし残念に思えるのは不要とも思えるシーンが散見出来ることでしょうか。これは後の「サスペリア」等、無駄をそぎ落とした作品群を見ているために余計そう思えるのでしょう。はたして監督自身がこのデビュー作をどう評価していたのかは分かりませんが、後に「サスペリアpart2」という類似の作品をあえて撮ったという事実があります。アルジェントが本作の脚本を気に入っていたことは確かです。でもだからこそ、より完成された演出力によってもう一度撮りたいと思ったとしても不思議はないと思えるのです。
と言うことで、本作と「サスペリアpart2」の似てるところ~(笑)。
主人公が偶然事件を目撃し、興味を持って自ら調査を始めることで犯人から狙われることとなる。
主人公は最初に目撃した事件現場で、何か重要なことを目にしていたがそれが何か思い出せない。
子供が描いたような不気味な殺人の絵が、過去に起こったある事件を暗示していた。
ある人物が犯行を自白して死んでいく。しかしそれは真犯人を守るための愛ゆえの行為だった。
本作で余計に感じたシーンは見事に排除され、「サスペリアpart2」は優れたミステリー作品であり優れたホラー作品として完成したのでした。
この「歓びの毒牙(きば)」という作品があったからこそアルジェントは監督としてやっていく自信を付け、そして後に数々の傑作を生み出してイタリアホラー界の帝王とまで呼ばれることとなりました。優れた映像感覚を持った数々のアルジェント作品。そしてその原点である本作にも、後のアルジェント作品を彷彿とさせるエッセンスは詰め込まれているのでした。
まーそれはそれとして・・・「オペラ座/血の喝采」(1988)以降のアルジェント作品は、映像的にはともかく作品としては正直言ってあまり面白くないのですけどね。
放送記録:2005年8月19日AM2:25~4:15関西TV(野球中継延長により15分押し)
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