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心が落ち着きを取り戻したので日曜の「雪の女王」について少し。
余りに有名な童話「マッチ売りの少女」ですが、過去幾多の絵本などが出版されていますし、アニメ等で映像化されたこともあります。これまでそう言ったものを何度も目にしてきたわけですが、今回の「雪の女王」版がそれらと決定的に違っていたのはマッチ売りの少女マリアのキャラクターでした。
絵本などの中に描かれたマッチ売りの少女はいつも雪降る街の中、辛そうな哀しそうな表情でマッチを売っていました。ところが今回のマリアはどんな悲惨な状況にでもいつも笑顔を絶やしません。今の自分の置かれた状況を不幸とは思っていないのか、それともそもそも理解出来ていないのか、心からの笑顔で主人公ゲルダを(薪すら無いため)冷たいお茶でもてなすマリア。
このマリアの明るさが、不幸の中でも他人を思いやる優しい心が、物語の悲惨な展開をさらに強烈なものにしていきます。
出崎監督の演出は情け容赦がありません。何かと童話などの結末をとにかくハッピーエンドに書き換えようという世の中ですが、原作以上に容赦のない展開を今のTVアニメで作ることが出来るのは出崎監督くらいかもしれません。
宛先不明で戻ってきた手紙を無邪気な笑顔でゲルダに見せるマリア。その時の絶句するゲルダの姿は我々視聴者の姿に他なりません。怒濤のごとくたたみかける不幸の中、マリアを救おうと奔走するゲルダ。けれどTV画面のこちら側にいる我々同様、どんなにあがこうとも結末を変えることは出来ないのです。
原作にある非道な父親は本作には存在しません。本作のマリアは早くに亡くなった両親に、そして最後まで面倒を見てくれた祖母に愛されて育ったのでしょう。「雪の女王」のこれまでのエピソード同様、本作にも本当の悪人というのは登場しません(まぁ大家はかなりアレではありましたが、家賃を滞納し続けてもギリギリまで住まわせてくれたという点で極悪人ではないかと)。でもだからこそキツい。
ほんの少しのボタンの掛け違えで坂を転がり落ちていく物語。天に召されることが唯一の救いであった原作の少女と違い、もしかしたらマリアを救うことが出来たのかもしれなかった物語。優しさ故にこれから永遠に後悔し続けなくてはならないゲルダ。
このあらゆる意味でキツい物語は、制作者のまさに情け容赦のない悪意の固まりでした。でもそこまでやったから、だからこそこれほどまでに心に突き刺さるのです。そしてそこまで真っ正面からやり切った出崎監督以下本作のスタッフを賞賛します。
そうそう、
「雪の女王」で以前に放送されたエピソード「幸運の梨の木」は本作の対になった物語に思えます。身寄りのない子供達を引き取っては面倒を見るものの、大家から追い立てを食らっている貧しい男。その男と子供達がゲルダの機転によって救われるというそんな物語でした。子供達の一人の少女の声が、今回のマリアと同じ声優さんだったことは偶然ではないでしょう。
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